2001/07/10
日経産業新聞
「光ファイバーによる高速回線が24時間使い放題」「月額3千円で高速インターネットを常時お使いいただけます」―。新築分譲マンション物件の宣伝広告には今、光ファイバーなどによる「高速ネット」の文字が躍っている。競争が激化するマンション販売各社が高速通信回線を標準装備しつつあるからだ。マンション最大手の大京は2001年度に発売する全物件に光ファイバーを導入。マンションまでは最大10メガビットの回線を用意する。主に東京都と神奈川県を対象とする日本綜合地所は通信会社やシステム構築・運用を手がけるシーファイブ・ドットコム(東京・中央)と組み、5月から供給する全物件に光回線を標準装備、マンションまでは最大100メガビットに設定した。藤和不動産なども大型物件を中心に光ファイバーによる高速通信を導入する。新築物件は建物の設計・施工段階から通信回線の配意を織り込めるため、既存物件に比べて高速ネットの導入が容易。通信会社側も営業活動を強化している。有線ブロードは三井不動産や住友商事など4社が建設中の超高層マンション「青山パークタワー」(東京・渋谷、34階建て、全314戸)から最大100メガビットの光回線導入を受注。さらに渋谷、世田谷などで4棟の中規模物件を受注したほか、「都内を中心に約140棟と本格交渉を進めている」(藤本取締役)。アイ・ピー・レボルーションはサービス・管理会社のティーウェッブ(東京・新宿)と組んで、明和地所が今後分譲する物件に最大100メガビットの光回線を敷設する。東京・杉並、文京の物件にも導入する。マンションの高速ネットブームはやや過熱気味。「光ファイバーを導入する」と広告に掲載していても、実際にどこの通信会社のどんな仕様の回線を使うか決まっていないケースが多い。現地の販売員が来場者から質問を受けても「よくわからない」と言葉を濁すこともある。各住戸で実際にどれだけの通信速度が出るかという問題も不明朗だ。各戸で回線を共有する分だけ通信速度は減衰する。例えばマンションまでが10メガビットでも10戸ずつで1回線を共有していれば各戸は1メガビット、100戸で共有していれば100キロビットになってしまい、ブロードバンド(高速大容量)」どころではなくなる。 こうした実態は顧客が実際に入居すればすぐわかる。「誇大広告」をした企業には、そのツケがいずれ来るはずだ。マンションを巡る光ファイバーの敷設合戦は当面「牛歩」のようになかなか進まない既存物件が舞台となり、来年頃からは最初から導入済みの新築物件が相次いで登場してくる。
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