2001/04/30
日本経済新聞
光回線など高速大容量のブロードバンド(広帯域)通信を利用できる「ブロードバンド集合住宅」が相次ぎ登場してきた。都市基盤整備公団は新築の賃貸集合住宅のすべてと既存集合住宅の一部で、光回線などを使える環境を整える。全戸に光回線を標準装備する民間の新築分譲マンションも出始めた。通信会社と不動産会社が組むケースも増えており、家庭向けのブロードバンド通信はマンションやアパートから普及していくことになりそうだ。
通信会社と連携増える
都市基盤整備公団は今後5年間で建設する約3万戸の新築賃貸住宅を対象に、全恋光回線を敷設できる環境を提供する。電話局などから住戸までの回線は光ファイバー回線か非対称デジタル加入者線(ADSL)を敷設し、住棟内は構内情報通信網(LAN)を構築する。ネット接続会社などは入札で選ぶ。既存の75万戸の集合住宅についても、今後5年間で建て替える3万戸で光回線などを使える環境を整える。まず1994年竣工の「恵比寿ビュータワー」(東京・目黒・520戸)をモデル事業に選定して回線を整備。順次、他物件に広げる。民間では日本綜合地所が5月上旬に発売する東京都や神奈川県の分譲マンションを皮切りに、今後供給する全物件について光回線を標準装備する。通信会社と提携して住戸までの回線速度は最大100メガビットに設定する。日本綜合地所向けに光回線などの構築、運用を請け負うシーファイブドットコム(東京・中央)は今後、他のマンション会社とも幅広く連携していく。入居者向けに年中無休の問い合わせセンターも設置する。マンション最大手の大京も2001年度に発売する分譲マンションすべてに光回線を導入する。住戸までの光回線は最大10メガビットで、住棟内は原則として電話回線を使う。藤和不動産は今年度に供給する分譲マンションのうち、大型物件の大半に光回線を導入する。 NTTコミュニケーションズなどと組んで、住棟内はLANを整備する。いずれも月額2千円台の定額料金で高速ネットが使い放題になる。高速通信サービス会社の有線ブロードネットワークスはマンション会社と連携して、光通信の加入者を増やす計画。3月から家庭向けで毎秒100メガビットの光通信サービスを開始、これまでに約100社のマンション会社などと接触した。大手を中心に数社と交渉を進めており、加入者を増やす有力手段と位置づけている。集合住宅で各入居者が回線を共有すれば、ネット接続料金が割安になったり、光信号を電気信号に変換する装置などを各戸に設置しなくて済むようになる。回線を共有する入居者が同時にネットを利用すると通信速度が遅くなる欠点もあるが、シーファイブドットコムは「将来、大容量回線をフル活用できるコンテンツ(情報の内容)が登場して、回線が混雑する状況になってきたら、住戸までの光回線を1ギガビットなどに増強することを検討する」(鈴木利幸社長)という。有線ブロードは 100戸のマンションだったら全入居者が回線を共有するのではなく、「ある程度のブロック単位に分けて通信速度が極端に遅くならないようにする」(宇野康秀社長)考え。高速大容量のブロードバンド通信サービスでは、当面は同軸ケーブルを使うケーブルテレビ(CATV)や、電話回線を使うADSLの普及が先行するが、中長期的には通信速度の圧倒的に早い光ファイバーが本命視されている。すでに通信会社と不動産会社が組んで、オフィスビルに光ファイバーを引き込む動きが広がっているが、こうした動きがマンションやアパートまで広がりつつある。
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